不動産の売却は、多くの方にとってそう何度も経験することではありません。多くの不安を抱えてしまい、売却したい不動産があっても放置してしまう事例が多くあります。不動産売却では、不動産所有者の権利移動や売買に伴う大きな金銭のやり取りが生じるので、法律上の手続きが多く発生することも不安の原因です。

ですので、まずは不動産売却についての基礎知識について説明します。

空き家は売却したほうが良い

調べものする夫婦

不動産売却は、不動産屋の選定や法律上の手続き、状況によっては相続問題など非常に多くの手続きや問題の解決が必要なので、容易ではありません。ゆえに、空き家として放置されることもあります。

相続した大切な不動産であっても使用する者がいなければ劣化し、不動産としての価値がなくなるだけでなく、多くのリスクを抱えることにもなります。

利用する機会がない空き家は売却することが、相続した方々、不動産にとってもっとも良い選択です。

不動産会社を選ぶときのポイント

不動産売却を考える際、「信頼して任せられる不動産会社」を選ぶことが重要です。どのような不動産屋であれば、信頼して任せられるのか? 不動産屋に必要とされる要素やノウハウ、実績などについて説明します。

POINT

POINT ❶

親身になって相談に

のってくれるか?

不動産を売却したい売り手にとっては唯一の物件であっても、不動産会社にとっては数ある物件のひとつです。担当者によっては温度差があり、コミュニケーションが円滑に進まないということもあります。感じの良い印象を与え、コミュニケーションがスムーズな業者を選ぶと、売却プロセスが円滑に進む可能性があります。

不動産を売却したいという事情は人それぞれにあるため、複数の不動産会社に相談し事情をくみ取った上で売却の話を進めてくれる業者を選定しましょう。

POINT ❷

地域密着型の

事業者であるか?

地域密着型の不動産業者は、地域特有の事情や市場動向に精通しており、適切な査定、価格設定が期待できます。建物の評価額は同じでも、実際の売却価格は地域ごとに大幅な差があります。地域のニーズやトレンドは変動するため、その地域で売買実績のない業者は選定対象からはずれます。大手の不動産会社へ依頼するよりも、地元密着型の不動産会社の方が売却に至るまでの時間や売却金額も良かったという話も多くあります。

また、どの業種にも言えることですが地域に根ざしている業者だからこそ、地域で評判を損なう仕事はしないし、できません。その地域で長く続いていると言うことは、それだけの信頼と実績があるということです。

POINT ❸

査定結果に

透明性はあるか?

査定結果について透明性があり、適切な説明あるかは、売り手が納得して売却プロセスを進めるためにも重要です。

査定の基準の説明

査定の基準や要因、同地域における過去の売却価格についての説明。物件の状態、周辺環境、市場動向なども含まれます。

査定のプロセスの透明性

どのようなワークフローで、査定が行われるかについての説明。例えば、現地調査や類似物件の比較など、具体的な手法や方法の説明はありましたか。

査定結果の根拠の提示

査定額が出たら、その金額の根拠についての具体的な説明。なぜその価格になったのか、どの要素がどれだけ影響を与えたのかなどです。

市場動向の説明

不動産市場の動向が査定にどのように影響するか、されるのかの説明。市場が活発である場合や不景気などで需要が低い場合など、現在の市場状況に基づいた査定が行われるかの確認します。

説明書や資料等の提供

査定結果や査定のプロセスに関する詳細な説明や資料は提供されるか。透明性に寄与すると伴に、売主は自身で情報を確認しやすくなります。

透明性がある査定は、売主と不動産業者との信頼関係を構築し、不安を軽減するのに役立ちます。査定のプロセスに疑問があれば、積極的に質問し、説明を受けることが大切です。

不動産会社によって

査定額が違う理由

不動産の査定額を算出する方法には、大きくわけて次の2種類があります。査定基準が明確なので、どの不動産会社でもほぼ同じ査定金額になります。
実際の査定金額は、不動産会社が判断する「地域性」や「市場の動向」、「類似物件の売却実績」などが考慮され算出されます。

積算査定

実税価格や路線価、地価公示等から算出した土地の価格と、建物の新築時の想定価値から経年劣化分を差し引いた価格を足し、算出する方法。

収益還元法

対象物件を賃貸に出した場合に想定される年間の賃料が、物件価格のうち何パーセントを占めるかという利回りを決め、算出する方法。

不動産査定額が高くなるポイント

不動産査定において、評価されるポイントがあります。建物は築年数によって査定額は下がりますが、新しい建物でも状態によってはマイナス評価を受けることがあります。売却を視野に入れている物件をお持ちでしたら、次のようなポイントに気をつけて点検や補修をすることをおすすめします。

POINT ❶

築年数

建物には「法定耐用年数」という基準が設けられています。

木造住宅(主に一戸建て)

22年

鉄筋コンクリート造
(主にマンション)

47年

木造住宅の場合、法定耐用年数に迫る築20年を経過すると、建物としての価値はほぼゼロになります。これは、法定耐用年数に迫る建物は、内装や外装に損傷がなくとも、柱や梁、基礎などの建物構造の劣化は進行しているものとみなされるからです。また、築30年を超えた木造住宅の物件は、一般的に「古家付き土地」とされ土地価格のみで取引されます。

POINT ❷

内装

内装や部屋はきれいか? 異臭はしないか? 間取りや空間、生活同線は快適であるか? などが査定のポイントになり、次の3つの要素が査定に大きく影響します。

雨漏りやシロアリ被害の有無

床下、屋根裏、押入れ、クローゼットの天井部に雨漏り跡や木部腐食がないか。
シロアリによる被害はないか。

水まわりの設備状況

キッチン、お風呂場、洗面化粧台などの水回り設備のグレード。高級システムキッチンや大型省エネ給湯器があれば査定額が上がる可能性あり。
水回り設備の状態。カビや腐食など劣化しやすいため、定期的なメンテナンスが必要。

最新設備の有無

太陽光発電システムやホームオートメーション機能、冷暖房の完備など、最新の設備がある場合は査定額が上がる可能性あり。

POINT ❸

外装

建物の屋根や外壁の塗装の劣化状況や損傷が査定に大きく影響します。損傷がみられる場合、雨水の侵入による構造体への影響が疑われ、査定額を大きく下げる可能性があります。

査定の際は建物に傾きがないか測定されます。傾きは窓や扉の開閉に影響し、傾きが大きいと基礎や構造体への影響も考慮され売却が困難なこともあります。

POINT ❹

土地の状況

建物が建てられている土地の形状や面積、周辺環境、道路との位置関係などが査定の基準になります。

日照・通風・眺望

快適な生活空間を決定づける要素で、道路に面した方角を基準に評価。南向きが最も評価が高く、東、西、北の順になる。

角地で南東向きの土地が最も高評価。周辺の高層建物の建設によって日照・通風・眺望が阻害されていないかも評価される。

面積・形状

広く使いやすい形状の土地は、高額査定が期待できる。

狭い土地や形状が複雑な土地は、再建築時の制約が多いため査定額が下がる。

最新設備の有無

太陽光発電システムやホームオートメーション機能、冷暖房の完備など、最新の設備がある場合は査定額が上がる可能性あり。

POINT ❺

周辺環境

街は時間経過で発展し便利になることもあれば、逆に衰退することもあります。周辺施設や街並みの変化は、査定額に大きく影響します。

駅までの距離

駅までの距離が短いほど土地価値は上がる。

徒歩10分以内やバスで15分以内(朝夕ラッシュ時に6~12便)が基準となり、評価が高いほど査定額も上がる。

通勤・通学の利便性

街の中心街やその周辺の人口増加エリアに立地し、駅やバス停が近く通勤や通学の利便性が良いほど高評価。

生活利便施設までの距離

生活利便施設が近くにあるほど、査定額が高くなる可能性あり。

※生活利便施設:スーパーなどの買い物関連や飲食店などのサービス関連に加え、公共施設や医療・福祉施設など

POINT ❻

その他の要因

市場

最終的な査定額の算出には、建物や周辺環境の状況だけでなく、市場状況も大きく影響します。

たとえば近年のウッドショックにより、新築木造戸建ての価格が高騰し、中古木造戸建て住宅のニーズが高まりました。査定額も高くなる可能性があります。

他にも行政の施策や都市計画、民間企業による開発などによる周辺環境の変化は、継続的に査定額に影響を与える可能性があります。

不動産売却の失敗例

高額査定がついたことで、

売れないことがある

不動産会社の査定金額が高いと、一見とても嬉しいことのように思います。しかし、その査定金額が市場価格から高すぎると売れ残ってしまい、何度も価格を下げてようやく売却にいたるということがあります。

原因は、査定・媒介契約担当者と販売担当者が異なり、売却希望金額と市場価格の差を詰め切れず、契約を締結してしまったからです。建物は月日が経てば価値が下がるので、市場に出て直ぐに買い手がつくことが望ましいです。市場価格を見極め適切な査定ができる不動産会社を選定することが重要です。

複数社への媒介依頼は

失敗の可能性も

複数の不動産会社と契約し、多くの広告媒体に掲載した方が、早く物件が売れる可能性があります。しかし不動産売却では、裏目にでてしまうことがあります。

「売却を急いでいる」と思われれば、値下げ交渉の材料に使われる可能性があり、複数のメディアに広告を出していることによって、「訳あり物件」「売れない要素がある物件」とみなされて、売却が困難になってしまうケースがあります。

よって、早い段階で複数の会社に広告を出すことは、おすすめできません。